あの頃は眠れなかった
全世界が敵だった
千の眼がこちらを見ていた
いたたまれずに起き出して
丘の上まで車で行った
月が見える位置に車をとめて
夜が明けるまで眺めていた

月は動くんだ
その淡い輝きから目を背けねば
月は何も語らない
だから穏やかに見つめられる

たとえて言うなら深い海の底で
膝をかかえてうつむくような
楽しい音など聴こえない
優しい気持ちは死に絶えた
窓辺に寝転び月を見上げる
ゆっくりと天空を往く その姿を
夜が明けるまで眺めていた

月は動くんだ
宇宙に静止してるものなどない
月はただそこに在る
自分のちっぽけさに救われる

(2018.4)