履き始めたのには訳がある
首の後ろが匂う夕暮れに
もう若くはないと気づいたんだ
ヤングの象徴ジーンズが
そのとき脳裏に浮かんだのさ

それまでそれとは無縁だった
折り目のついたスラックスと
首元で光るネクタイが
いわば私の戦闘服
肩で風切る黄金の日々

ある年いきなり会社倒産
看板なくなりゃ唯の人
そんな川柳ほんとだった
酒場やカフェのカウンターで
気取ってみても虚しいだけ

なぜブラックなのかブルーじゃなくて
いきなり青は恥ずかしかった
黒なら地味だと思ったけど
お尻のラインが素敵な人が
着こなすのにはセンスと言った

だけど私は履きたかった
最初はたしかにダサかったけど
洗濯重ねて少しグレイになった頃
違う自分になれた気がしたんだ
ほんとにしたい事をするのがいい

(2018.2)