失いっぱなしってことはないんだよ
と、風が優しく教えてくれた
土手に腰を下ろして川面を見つめていたときだった

泣くだけ泣いても泣き足りなかった
日常が薄くなって自分が溶けていくような
何も食べたくない日が続き
少しも眠れぬ夜が続き
それでも旬な苺の甘酸っぱさと
母の夕餉の支度の音が
わたしの暗黒行きを引き留めたんだ

失いっぱなしってことはないんだよ
と、風が優しく教えてくれた
今日はわたしの誕生日

(2018.4)