写真 : 野村ゆき
詩 : Tomo Kusunoki


 
ほんとにいるなんて思いもしなかった
映画やコミックの中にならわかるけどさ
殺し屋
おれみたいな平凡なサラリーマンに何の用だい?
誰かの恨みを買うことってしたっけな
そりゃ傷つけたことが一度や二度はあったかもしれない
けど生命を奪われるほどのことなんてしてないぜ
たぶん
薄闇の中で そいつは落ち着いた声で言った
この花火が燃え尽きるまで猶予をやろう
そうして差し出された一本の線香花火とライター
銃口が後頭部に当てられている
選択肢は無い
少しでも長く生きていたい
そう切実に思ったのは初めてだった
震える手でライターを持って点火する
カチッ
小さな光が黒い背景に揺れる
そして花火に火を移す
細長いコヨリの先端から閃光が弾けた
輝くマグマ球から全方向に放射される光の針
こんな美しいものを見たことがあったろうか
過去の出来事が高速で映写される
それは本当だった
マグマ球の輝きはしだいに弱まっていく
それが完全に消えたとき
衝撃と同時に闇が来た