求職ぶるぅす 13

blues

「岡田くんは、どうするの?」と小谷が尋ねる。
「実は、森林組合に欠員が出るようなことも聞いてるんですが」
「そりゃ、ええ話じゃ。わしも応募するか」と伊藤が身を乗り出す。
「だめだよ伊藤さん。たぶん年齢制限があるよ。おれだって、あかんやろな」
 おれがそう言うと、伊藤は、歳だけは取りとうない、と大仰に嘆いてみんなを笑わせた。
 その笑い声に反するかのように、次の仕事に関する話題は決して明るいものではなかった。世の就職事情は依然として厳しいのが現状だったからだ。
 みんな、これからどう生きていくのだろう。おれにしても次の仕事のあてはなかった。不安でないといえば嘘になる。けれど、不安と闘うのではなく、不安な現実を受け入れてその向こう側に進むしかなかった。
 おれは、思い思いの姿勢で座っている七人の男たちを順繰りに眺めた。なかなかに個性的な人物が揃ったもんだと思った。わずか一か月のつきあいだったにせよ、明日からもう顔が見れないとなると、やはり一抹の寂しさはあった。
 しばらくみんなの顔を見たあと、おれは松の木に背をもたせかけて目を閉じた。
心のおもむくままに防風林の向こうにある海に意識をやると、会話が遠のき、波の音が聞こえてきた。
 おれは今日までの日々を切れ切れに思い出し、我ながらよくやってきたよなあと、しみじみ思った。自己憐憫かもしれなかったが、たまには自分を誉めてやることも必要だと、そんなふうに思えたのは、もうすぐやってくる別れに触発された感傷だろうか。
 どれほどの時が流れたのか、ちらちらっと顔に陽光の温もりを感じ、ふと目を開けた。前方の重なるように生えている二本の松が風に振れている。その真向こうに太陽が位置しており、枝が揺れるたびに眩しい光が木々の間から射し込んでいた。
 拡散する光の粒子を見た瞬間に、おれは何故かユリの笑顔を思い浮かべた。歯並びのいい口元が、ほほえんでいた。
「ユリ」
 おれは思わず名前を呟いた。そして、ユリという存在はおれにとって光みたいなものなんだと今更のように気づいた。おれの心の闇を照らす光だ。おれもまた、あいつの闇を照らす光となれるだろうか。
 ふたたび目を閉じた瞼の奥まで太陽が光を届け、おれの視界は燃え上がる金色の炎で覆われた。

                                    了

chapter 12
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