和菓子の素材たち / 包む葉物


○本文
何らかの機会に植物の葉っぱを手に取ったとき、自然の造形美に目を見張ったことが、おありではありませんか? 葉脈の緻密さ、葉身の周辺や本体の形状、そして色や艶など。私たちの先人も、きっとそんな感慨にひたったことでしょう。そして、ある時、お菓子を葉っぱに挟むことを思いついたのでは? 持ち運びに便利で、包む葉の移り香も楽しめ、いいことずくめだと考えたのかもしれません。和菓子の素材たちシリーズの最終回は、葉物についてのお話です。

三松堂では現在、四通りの葉を使った和菓子を作っています。すなわち、椿の葉で「椿餅」を、桜の葉で「さくら餅」を、柏の葉で「柏餅」を、笹の葉で「ちまき」といった具合です。

椿は万葉集の時代からよく知られた照葉樹林の代表的な樹木で、葉はご存じのように肉厚で艶があります。椿餅は二枚の葉の間に餅を挟んだもので、源氏物語の若菜上に記述があるほど歴史のあるお菓子です。当店では黒米を混ぜ込んだお餅で、こし餡を包み、椿の葉を上下に添えてあります。

花と言えば桜。その桜の葉を塩漬けにしたもので餅を包んだ、春を代表するお菓子がさくら餅です。江戸時代から記録に残されており、隅田川沿いの桜葉を使ったさくら餅が18世紀初頭に売り出され、約百年後には一年間で77万5千枚の桜葉を使用するほど大繁盛したと文献にあるそうです。さくら餅の葉は塩漬けにしてあるので食べることができますが、この葉を食べるか食べないかということを桜餅談義と呼ぶ人もいるようです。

柏の葉も古代から食器として使われていましたが、餡入りの餅を包んだ柏餅は江戸時代から関東を中心に広まったとされており、関西で人気のちまきと共に、端午の節句に食べる行事菓子の一つです。西日本の一部では山帰来の葉で代用されていますが、三松堂では柏の葉を用いています。ちなみに、餅粉は近江産の羽二重で、餡は十勝産雅小豆で作ります。

ちまきは、餅や羊羹、葛、外郎などを笹の葉でくるんでい草で縛り、蒸したもので、中華料理の粽の流れを引くと言われています。平安時代より記録がありますが、当時は米を茅などの葉で巻いて蒸したと考えられています。笹の葉で巻いた菓子としてのちまきが登場するのは江戸時代になってからです。当店では、粘りがあり、キメ細かで、餅に仕上げたとき滑らかな食感になる近江産の羽二重を使用した餅を、笹の葉でくるんでいます。

このように自然が育んだ葉っぱという美しいパッケージを、ほとんどそのままの形で食文化に取り入れた先人の知恵と工夫に思いを馳せながら、このシリーズを終えたいと思います。

○さくら餅
さくら餅の香りが春を運んできます。近江産羽二重もち米から作る淡いピンクの外皮と、絶妙な塩加減の桜葉でいっそう引き立つ十勝産雅小豆のこし餡を味わうと、芽吹きの季節を生きる喜びが全身に満ちていきます。

○花うす紅(はなうすべに)
桃色と白の藷蕷生地にはさまれた柚子風味の餡も薄紅色の装いです。藷蕷生地とは、すりおろした山芋、米粉、砂糖を混ぜて蒸したもの。白丸豆のさらっとした白餡と、ポイントの鹿の子豆。抑えた甘味と柚子の香りの名コラボです。

copywriting