和菓子の素材たち / 穀物系のベース素材


○本文
秋の声が聞こえはじめると、思い出す和歌があります。万葉の歌聖といわれる柿本人麻呂の「人みなは萩を秋といふよし われは尾花が末を秋とはいはむ」という歌です。尾花はススキの別名で、お月見には欠かせない秋の七草の一つ。そして同じく無くてはならないのが月見団子でしょう。

月見団子は新粉で作るのが一般的ですが、では新粉とはどういう粉なのかご存じですか?

今号は和菓子に使われる素材として、各種穀類の粉をご紹介します。

粉を穀類別に分けると、米粉・小麦粉・はったい粉・蕎麦粉・きな粉・小豆粉などになり、種子ではなく根から採ったものに葛粉・片栗粉・蕨粉などがあります。

先程の新粉は生のうるち米を水洗いして乾燥させた後、粉に挽いたもので、新粉・上新粉・上用粉の順に粒子が細かくなります。

一方、もち米を生のまま粉にしたものを餅粉といいます。餅粉は求肥(餅粉に砂糖と水飴を加えて練り上げたもの)や餅菓子などに使われます。三松堂では近江産羽二重という粘りがありキメ細かな餅粉で求肥を作り、「あやめ餅」「栗の大福」「花茜」などに使っています。

また「さくら餅」の生地には通常、もち米を蒸して乾燥させ粗挽きした道明寺粉が使われますが、当店では、近江産羽二重のもち米を蒸してついたものを使用しています。ちなみに道明寺粉という名は、当初大阪の尼寺道明寺で作られたことに由来するそうです。

さて、次は小麦粉について。

小麦粉はグルテン(麩質)の強弱によって強力粉・中力粉・薄力粉に分類されますが、和菓子には主に薄力粉が使われます。薄力粉は軟質小麦の胚乳を製粉したもので、タンパク質の含有量が少なくグルテン質が弱いので、製品の仕上がりが軽やかになります。

外国産と比べ、ポストハーベストの農薬の心配があまり無い国内産小麦粉を使用した当店のラインナップとしては、福岡産〈筑後・山笠〉使用の「源氏巻」「ふくしろ」「津和野おぐら」など、佐賀産の〈香梅〉を使った「鴎外」「むしどら」「くるみ」などがあります。

米粉、小麦粉以外には葛粉や蕨粉などがあり、これらの粉による製品として、葛粉単品を使う「くず饅頭」や、寒天、増粘多糖類などとミックスして更なる味わいを実現した「水まんじゅう」「和良比餅」「あんわらび」が、また小麦粉と葛粉のハーモニーとして「栗蒸し羊羹」があります。

流れる秋に、太古より人類が主食の材料としてきた穀類の粉から、かように多様で優美な和菓子を生んだ先人の心を、しみじみ想ってみませんか?

○焼き印付き源氏巻
小ぶりなパッケージを開けると、笑み印がほほえみを誘います。北海道十勝産の〈雅〉小豆で作るほどよい甘さのこし餡と、福岡産の小麦粉〈筑後・山笠〉による皮は、とっても仲良し。伝統に寄り添いながら遊び心も忘れない一品です。

○むしどら
佐賀産小麦粉〈香梅〉と黒糖をミックスした生地を蒸し上げ、備中産〈大納言〉小豆で作る粒あんを間にはさんだ蒸しどら焼きです。生地はしっとり、甘さすっきり、黒糖のほのかな香り。口中に広がる美味しさは、老若男女を問わず大人気です。

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