和菓子の素材たち / 夏菓子のベース素材
○本文
陰暦六月の異名の一つに風待月があります。現在の陽暦ではほぼ七月に当たり、雷鳴を合図にするかのように梅雨が明けて、陽射しも日増しに強くなってくる頃です。朝夕の凪、土用凪の言葉のごとく、風が止む季節でもあります。昔の人たちは涼しさを願って風待月と名付けたのかもしれません。
涼を求める気持ちは今の私たちも同様ですよね。目で(花火)、耳で(風鈴)、肌で(水浴)、そして舌で(かき氷)見つける夏の涼しさ。それら日本の風土に根ざした納涼方の中に、夏の和菓子も加えてみたいと思います。
かつて夏の暑さに体力が衰えて疫病が流行った時代に、厄払いと滋養を兼ねてお菓子を食べる行事がありました。夏の暑さに負けないために、甘くてのど越しがよく、透明感があり涼しげな意匠が為されたと聞きます。
では、夏菓子はどんな素材から作られているのでしょうか。
まず透明感を出すために欠かせないのが寒天です。これは日本の伝統的な食材で、天草などの海藻を煮溶かして固め、厳寒期の野外で自然凍結と天日乾燥を繰り返して作ります。寒天の種類には糸寒天、角寒天、粉寒天等がありますが、三松堂では腰と強度の強い糸寒天のみを使って「水ようかん」などを作っています。
寒天と同様に透き通ったふるふる感を出す素材として、カラギーナンに代表される増粘多糖類があります。三松堂の「みあん梅」は、紅藻類から抽出するこの天然ゼリー化剤と、自家製梅蜜、果糖、クエン酸、水から作られる見た目にも涼しい夏菓子です。
さて、夏に味わう和菓子として、わらび餅を忘れるわけにはいきません。地域によっては山菜の季節に合わせて発売されるようですが、暑中にひんやりと弾力のあるお餅を香ばしいきな粉と共にいただくのも良いものです。
柔らかく、つるんとした極上の喉ごしを生む原料のわらび粉は、山菜の蕨の根から抽出する澱粉質で、まず水に溶かしてから火にかける食材です。生産されるまでに大変な時間と労力を要するため、国内での生産量は非常に少なく高価なものとなっています。
三松堂の店頭では、「和良比餅」や「あんわらび」が、そして冷やすといっそう美味しい水ようかんやみあん梅などが、皆様のお越しをお待ちしています。
季節の移ろいとともに姿を変えゆく和菓子という日本の宝を、舌と心で味わってみませんか?
○水ようかん
三松堂の水ようかんは「さらっと」がキーワード。備中産赤小豆で作るこし餡の舌触り、ザラメ砂糖の甘さ、岐阜山岡町産の最高級寒天、各々のさらっとが結集して涼味満点な夏菓子ができ上がりました。のど越しもするっと爽やかです。
○抹茶のむしどら
はっとするほど色合いの良いどらやきです。宇治産の上品な抹茶とザラメ砂糖と国産の小麦粉を混ぜ合わせて蒸し上げた、しっとりとしたグリーンの生地に、国産小豆の餡をはさんであります。冷たい豆茶や麦茶、はたまた牛乳などといかがでしょう?
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