和菓子づくりの道具たち / かたどる


○リードコピー
和菓子屋の店内を覗くと、ショーケースの中から色とりどりの和菓子が迎えてくれます。色合いや質感だけでなく、その姿からも、私たちに何かを語りかけてくるようです。

○本文
和菓子をかたどるのに一番使われる道具といえば、やはり手ということになります。手のひらや指先を繊細に用いて形づくっていきます。そして手による表現を補うというより、別の魅力を引き出すために、いくつかの道具も使われます。

たとえば「木型」というのがあります。これは桜の木でできた方形の板に動植物などの型が彫り込まれたもので、お干菓子(落雁)用と上生菓子用があります。

お干菓子用木型は柄が付いた細長い板で、一つの木型には同じ型が複数彫られており、一度に量産できるように工夫されています。木型は二枚一組で、二つ重ねて使います。上白糖とみじん粉を水で練り上げた生地を詰めたあと、上の一枚を取ってから、下のを逆さにして抜き落とします。上下の板には互いに噛み合う凹凸が設けられており、型がずれないようになっています。

上生菓子用木型には、掌大の型が一つだけ彫られています。生地の詰め方や木型のしくみは、お干菓子用と同じです。詰める生地は、餡に小麦粉、餅粉を混ぜて蒸し上げたものを冷まし、必要に応じて天然色素で着色した「こなし」と呼ばれるものなどを使います。

このように複数の木型を用意することにより、バリエーション豊かなお干菓子や上生菓子を作ることができます。四季折々の自然や行事などのシンボルを型に彫り込むことにより、和菓子を通して季節の変遷を味わえるというわけです。

ところで、この木型はいつ頃から使われるようになったのでしょうか? 源氏物語に、平安時代に作られていた菓子についての記述があると聞きます。この菓子は、五穀を挽いた粉を甘葛の液汁を煮詰めたもので練り、細い竹筒に詰めて、固まった後に取り出し、小口切りにしたものだそうです。この竹筒こそが木型の原型だといえるかもしれませんね。

さて、他のかたどる道具としては、生地を、平たく伸ばす「ローラー」、花やハート形に切り抜く「抜き型」、銅線で粗く編んだ目に押しつけて無数の細かな糸状にする「とおし」などがあります。

実用品として作られた道具が、その機能を十分に発揮することで発現する美は、私たちの心を魅了してやみません。そして、それらを使いこなす職人の手は、おいしい和菓子を生み出すために、今日も忙しくしなやかです。

○むしどら・抹茶
みどりの化身かと見まがうほどの鮮やかで深い色合いは、生地にたっぶり含まれる高級抹茶ゆえです。上品でさりげない甘さが嬉しい備中産大納言の粒あんが、しっとりとした生地に挟まれています。

○みあん梅
吹き抜ける風が心地よい日、冷やしておいたみあん梅をするっと味わう。しあわせ。口中にひろがる梅の香気と甘酸っぱさを楽しむ。さらにしあわせ。この季節に似合う、透き通った涼菓です。

○私の役割(プロフィール)
三松堂科長 : 末永紳一
和菓子職人。45歳。下関市出身。高校卒業後、叔父の招きで三松堂に入社。その後、防府と京都の和菓子屋に出向し、修行を重ねる。24歳で三松堂に戻り、身に付けた経験と技術を生かしながら菓子づくりを続ける。趣味は自然の中を歩くこと、そして海釣りである。

○私の役割(リードコピー)
三松堂の味に四季のエッセンスを加えること、それが私の役割です。ちょっと抽象的すぎますかね(笑)。でも私が常日頃から考え、願っているのは、そのことなんです。

○私の役割(本文)
私は主に上生菓子やお干菓子づくりを担当しているのですが、特に上生菓子は毎月六種類ほど作っており、味や形、色の配置、材料など、月替わりで違ったものを用意しています。それは何より、お客様にいろいろな味を楽しんでいただきたいからです。その際に私が心がけているのは、四季折々の自然の美を、いかに和菓子に取り入れるかということなんです。幸い歩くことが好きなので、時間があれば戸外を散歩して、その時々の自然の様子を観察するようにしています。仕事を通じて喜びを感じるのは、予想外に納得のいくものができたとき、そしてお客様の好評を博したときです。今後の夢ですか? 普通にないような先鋭的なお菓子を作れたらいいなと思いますね。

○写真のキャプション
お干菓子用や上生菓子用の木型。いずれも使い込まれ、よく手入れされた清潔な道具たちです。和菓子と同じく伝統を感じますね。

copywriting