2006
7
18
ふたたびライダーに
相棒を手放してから、風を切り裂いて走ることはなかった。高台にある果樹園への自転車通勤に疲れてきた頃、一緒に酒造りをした独居爺さんの顔を見に行ったら
「免許も失効したけえ、あんた乗りんさい」
という話になった。
「じゃあ、代わりに自転車を」
名義を変え、友人の店で点検整備を済ませ、保険に入り、いざ、いざ、いざ。

相棒を手放してから、風を切り裂いて走ることはなかった。高台にある果樹園への自転車通勤に疲れてきた頃、一緒に酒造りをした独居爺さんの顔を見に行ったら
「免許も失効したけえ、あんた乗りんさい」
という話になった。
「じゃあ、代わりに自転車を」
名義を変え、友人の店で点検整備を済ませ、保険に入り、いざ、いざ、いざ。

人は死ぬ瞬間に、これまでの人生が走馬燈のように頭に浮かぶという。青春時代、結婚生活、旅の思い出、子供や孫の顔、連れ合いと仰ぎ見た夜空に広がる花火などなど。でも、たった9歳で橋の上から8米下の水面に落ちる数秒間に、いったい何が思い出せる? その瞬間に彼女の脳裏にあったものを、おれは想像して、胸が潰れる。

昨日から林檎畑での作業に移った。ある程度大きくなった実に、防菌袋をかけていく。たいした数ではない。たった八万個である。途端に目眩を感じるおれ。きっと照りつける太陽のせいだ。一日千二百袋が目標だとか。慣れないので、やっとこさ八百ほど。品種は複数あるが、今日のは津軽だった。名前にちなんで気温下げてくれ。
